基礎から学ぶ ビットコインデータ分析|02 CVD編
実データから、結果と次の動きを読み解く
執筆:AIリン&K / 監修:投資家K
ビットコインが急落したあと、価格が戻ってきた。
ここで気になるのは、「現物がしっかり買われているのか。それとも、ショートの買い戻しで上がっているのか」というところです。
同じ上昇でも、売買の中身は違います。価格とOIだけでは見えなかった部分を、もう一歩掘り下げるのがCVDです。
今回は、現物CVDと先物CVDの違いから、買い需要・売り圧力の読み方までを整理します。後半では、実際のビットコインの値動きに当てはめて見ていきましょう。
- CVDから、買いと売りのどちらが積極的だったかを読む方法
- 現物の買いと、先物の買い戻しを見分けるための考え方
- 価格・現物CVD・先物CVD・OIを組み合わせた4つの実例
CVDとは?ビットコインの買い需要・売り圧力を読むデータ
CVDは、積極的に買われた数量と、積極的に売られた数量の差を、積み上げたものです。正式にはCumulative Volume Deltaといいます。
「買いが多い」と聞くと、買い手の人数が多いように感じるかもしれません。でも、取引が成立するときは、必ず買い手と売り手が両方います。
見るのは人数ではなく、どちらが注文をぶつけたかです。
まず、現物のBTC売買を例に考えてみましょう。この注文の仕組みは、先物でも共通です。
誰かが「この値段でBTCを売ります」と売り指値を置いて待っている。そこへ別の人が「今すぐ買う」と成行注文を出し、そのBTCを買っていく。買う側から動いた取引なので、CVDでは買いに数えます。
逆に、誰かが「この値段ならBTCを買います」と買い指値を置いて待っている。そこへ別の人が成行でBTCを売る。買い指値がその売りを受け止めても、動いたのは売る側なので、CVDでは売りに数えます。

この差がプラスなら、その時間帯は買いが優勢。マイナスなら売りが優勢です。それを時間の流れに沿って足した線がCVDになります。
CVDが上向いているなら買いが積極的。下向いているなら売りが積極的。まずは、この読み方から始めれば大丈夫です。
ただ、まだ約定していない指値注文や、買いたいと思っている人全員の需要までは分かりません。CVDで見えるのは、実際に成立した取引のうち、どちらが積極的だったかです。
現物CVDと先物CVDは、何が違う?
スマホでは表を横にスクロールできます。
| 指標 | 見ている売買 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 現物CVD | ビットコインそのものの売買 | 現物市場で積極的な買いが続いているか、売りが続いているか |
| 先物CVD | 先物契約の売買 | 積極的な買い・売りに、建玉の増減が伴っているか |
| OI(未決済建玉) | まだ決済されていない契約の残高 | 新しく残るポジションが増えたか、減ったか |
現物CVD:実際のBTC売買で、どちらが積極的か
価格が上がり、現物CVDも上がっているなら、その取引所では現物の積極的な買いも確認できます。
一方、価格だけが上がり、現物CVDが下がっているなら、「現物の成行買いが広く上昇を支えている」とは言い切れません。先物側の動きや、売りを受け止める指値買い、他の取引所も確認したくなる場面です。
現物CVDは、長期保有者が買っている証拠でも、取引所への資金流入額でもありません。売買の積極性を確かめるデータとして使います。
先物CVD:買いだから新規ロング、とは限らない
先物の買いには、新しくロングを持つ買いもあれば、ショートを閉じる買い戻しもあります。売りも同じで、新規ショートとロングの決済が含まれます。
だから、先物CVDとOIを一緒に見るわけです。
たとえば、価格と先物CVDが上がる一方でOIが減るなら、ショートの買い戻しが関わっている可能性を考えます。ただし、同じ時間帯に新規建てと決済が混ざるため、これだけで内訳を確定することはできません。
前回の記事|OIの基本を確認するビットコインのOIの見方を徹底解説価格の上昇・下落とOIの増減を、実データ4パターンで整理しています。CVDの見方は「買われたか」から「価格が反応したか」へ
CVDだけを見て、上向きだから買い、下向きだから売り、と決めるのは早いです。
見たいのは、その買いや売りに対して、価格がどう動いたか。ここを組み合わせると、相場の見え方が変わります。
スマホでは表を横にスクロールできます。
| 価格とCVDの組み合わせ | 読み取れること | 次に確認するもの |
|---|---|---|
| 価格↑・現物CVD↑ | 上昇と積極的な現物買いが重なっている | 買いの継続、出来高、上値での反応 |
| 価格↑・現物CVD↓ | 現物の積極的な買いだけでは説明しにくい | 先物CVDとOI、他の取引所 |
| 価格が上がらない・CVD↑ | 買いが出ても価格を押し上げられていない | 上値の売り板、買いが鈍ったあとの動き |
| 価格が下がらない・CVD↓ | 売りが出ても価格を押し下げられていない | 下値の買い板、売りが鈍ったあとの動き |
買いが出ても上がらないときは、指値の売りに受け止められている可能性があります。逆に、売られても下がらないときは、指値の買いに受け止められている可能性があります。こうした状態を「吸収」と呼びます。
ただし、価格とCVDのズレだけで、大口の意図や反転を決めつけることはできません。板や約定の履歴、別の取引所も合わせて確認します。
実データ① 価格は上昇。でも現物CVDは下がっていた
ここからは、BinanceのBTCUSDTを使います。現物・USDT無期限先物・OIを同じ取引所、同じ時間帯で揃えました。日時はすべて日本時間です。
まずは、2026年10月25日2時から8時までの6時間を見てみましょう。
現物価格:80,219.30 → 80,605.60 USDT
現物CVDの変化:−192.6 BTC
先物CVDの変化:+1,811.4 BTC
先物OIの変化:−0.30%

価格は上がりましたが、現物では積極的な売りの方が多くなっていました。一方、先物は買い優勢で、OIは減少しています。
この組み合わせなら、ショートの買い戻しが上昇に関わった可能性を考えます。
もちろん、これだけで「すべてショートカバーだった」とは言えません。現物の指値買いや他市場の影響も残ります。少なくとも、この上昇をそのまま「現物の積極的な買いが強かった」と説明するのは違います。
その後も上昇が続くかを見るなら、現物CVDが上向くか、価格が押しても買いが続くかを追っていきたいところです。
実データ② 買いが優勢でも、価格は上がらなかった
次は、10月26日19時から27日1時までです。
現物価格:80,538.53 → 80,427.69 USDT
現物CVDの変化:+953.3 BTC
先物CVDの変化:+1,584.8 BTC
先物OIの変化:+0.04%

現物の積極的な買いは、売買数量の57.89%を占めていました。それでも、6時間の始点と終点を比べると価格は少し下がっています。
ここで見るべきなのは、買いの多さだけではありません。それだけ買われても、価格が上がっていないという反応です。
指値の売りが買いを受け止めていた可能性があります。ただし、今回の集計には過去の板情報を含めていないため、吸収が起きたと断定はしません。
実際にこうした場面を見たら、上値を抜けて価格がついてくるのか、それとも買いが鈍って押し戻されるのかを確認します。CVDが上がった時点で、次の上昇まで決まるわけではないんですね。
実データ③・④ 急落後の反発に、現物の買いはついてきたか
10月30日は、急落とその後の反発を続けて見られます。5時から11時までをC、11時から17時までをDとして比べます。
| 同日の6時間比較 | C|5〜11時 | D|11〜17時 |
|---|---|---|
| 現物価格の変化 | −4.96% | +1.75% |
| 現物CVDの変化 | −2,220.9 BTC | +15.1 BTC |
| 先物CVDの変化 | −14,173.0 BTC | +780.0 BTC |
| 先物OIの変化 | +2.00% | 約+0.003% ほぼ横ばい |
| 現物の積極的な買いの比率 | 43.24% | 50.11% |

C|約5%の急落。OIは減らず、増えていた
現物価格は80,848.64 USDTから76,837.04 USDTへ下落。現物CVDも先物CVDも減り、両市場で積極的な売りが優勢でした。
一方、先物OIは2.00%増えています。
つまり、この6時間を「ロングが清算され、ポジションが減っただけ」と捉えることはできません。決済が起きていても、区間全体では建玉が増える動きが重なっていました。
新規ショートの関与は候補になりますが、OIにはロングとショートの両方が対応しています。売り優勢とOI増加だけで、増えた建玉をすべてショートと数えることはできません。
D|1.75%反発。ただ、現物の買いはほぼ半々
その後、価格は76,837.04 USDTから78,185.38 USDTへ反発しました。
この間の現物CVDの増加は15.1 BTC。積極的な買いの比率は50.11%で、売りとほぼ拮抗していました。
価格は戻った。でも、この6時間を通した現物の積極的な買いに、大きな偏りはなかった。ここがポイントです。
先物OIも始点と終点ではほぼ横ばいでした。この例を「OIが減ったからショートカバー」と説明することもできません。
反発に乗るかを考える前に、現物の買い優勢が続き始めるのか、戻り高値を超えられるのかをもう一段確認したくなります。
前回のOI記事はBybit、今回は現物と先物の売買量を揃えるためBinanceを使っています。取引所が違えばOIの増減率も変わります。別々の取引所の数字を継ぎ足して、同じ市場の動きとして扱わないようにしましょう。
CVDを実践で使うときの確認順序
- まず、価格が動いた時間帯を決める。
急落した6時間、反発した6時間など、比較する範囲を揃えます。 - 現物CVDを見て、積極的な買い・売りを確認する。
価格と同じ方向か、逆方向か。差の量だけでなく、売買全体に対する比率や出来高も確認します。 - 先物CVDとOIで、ポジションの動きを重ねる。
買い戻しの可能性があるのか、新しい建玉が増えているのか。候補を絞ります。 - その売買に、価格がついてきているかを見る。
買われても上がらない、売られても下がらない場面では、板や他市場も確認します。
「CVDが上がったから上がる」ではなく、「買いは出ている。その買いで高値を更新できたか」と考える。この一段を入れるだけでも、判断は変わってきます。
マイナスのCVDでも、買いが優勢になることはある
CVDは、どこから積み上げたかで数値が変わります。
たとえば、−1,000 BTCから−800 BTCに動いたなら、その区間は+200 BTCです。表示はマイナスでも、その区間では積極的な買いが上回っています。
ゼロより上か下かだけでなく、見ている区間でどちらに動いたかを確認してください。日次リセットの有無や開始時刻が違うCVD同士は、そのまま比較できません。
取引所・通貨ペア・単位も揃える
BTC数量のCVDと、ドル建てのCVDは別物です。単一取引所のBTCUSDTと、複数取引所・複数ペアをまとめたCVDでも数字は変わります。
今回の実例はBinance BTCUSDTに限ったものです。市場全体の買い需要を判断するなら、他の主要取引所にも同じ動きがあるかを確認します。
CVDはどこで見る?ForeDexとCoinGlassを使い分ける
普段の分析で使っているのはForeDexです。CVDを確認するときも、まず候補に入るツールです。
ForeDexとCoinGlassは、今回紹介するCVDページの見せ方に違いがあります。同じCVDでも、何を知りたいかで使い分けると分かりやすくなります。
ForeDex:どのサイズの注文が買っているかを見る
ForeDexの「CVD by Order Size」は、注文を米ドル換算の金額帯に分けてCVDを見るページです。
たとえば、全体では買い優勢でも、小さい金額帯と大きい金額帯で動きが違うかもしれません。どのサイズの注文で買い・売りが優勢なのかを掘り下げるときに使えます。
ここで分かるのは注文の大きさです。同じ人が注文を分けることもあるので、大きな注文をそのまま機関投資家、小さな注文を個人投資家と決めつけないようにします。
ForeDexの公式ページ・公開API資料で、注文金額帯別の表示と、取引所・通貨ペア・市場種別を指定する項目を確認しています。チャートの閲覧にはログインが必要です。出典:ForeDex公式CVD資料
CoinGlass:現物・先物や、取引所ごとの違いを見る
CoinGlassのCVDページでは、現物と先物を並べたり、取引所別に分けたりできます。
「現物も買われているのか」「特定の取引所だけで売られているのか」。こうした比較をしたいときに使いやすい構成です。
集計の開始点を切り替える機能もあります。日次リセットか、表示範囲の左端からの累積かによって数値は変わるため、比較するときは設定を揃えます。出典:CoinGlass公式CVDページ・FAQ
スマホでは表を横にスクロールできます。
| 見る切り口 | ForeDex CVD by Order Size | CoinGlass CVDページ |
|---|---|---|
| 今回紹介する機能 | 注文金額帯別のCVD | 現物・先物、取引所別のCVD |
| 知りたいこと | どのサイズの注文が買い・売りを主導しているか | どの市場・取引所で積極的な売買が出ているか |
| 確認する設定 | 対象取引所・通貨ペア・市場・金額帯・期間 | 対象取引所・現物/先物・期間・累積の開始点 |
最初は普段使うForeDexで売買の内訳を確認し、現物と先物の動きが気になったらCoinGlassでも比べる。この使い方なら、見る目的がはっきりします。
両方にCVDと書いてあっても、数字がそのまま一致するとは限りません。対象取引所、通貨ペア、現物・先物、単位、開始時刻を揃えて比べましょう。
比較は2026年11月3日に確認した上記ページの機能に限ります。本文の実例チャートはBinanceの公開データをBTC数量で独自集計したもので、ForeDexやCoinGlassの画面を転載したものではありません。
データを見るサイトを選ぶCoinGlass・CryptoQuant・CoinAnk・Glassnodeを比較デリバティブとオンチェーン、知りたい内容に合ったツールを整理。次は「清算データ」と組み合わせて見る
OIでポジションの増減を見る。CVDで、積極的な売買を見る。ここまでくると、次に気になるのは「その売買は、自分の判断で出た注文なのか、強制清算によるものなのか」という部分です。
そこで役立つのが清算データです。
次の記事では、実際に発生したロング・ショートの清算と、清算が集まりそうな価格帯を示すヒートマップの違いを整理します。今回のOI・CVDと組み合わせて、急落や急騰の中身をもう一段見ていく流れです。
相場を確認するビットコイン・ダッシュボード対象市場と取得時刻を確認しながら、現在のデータをチェック。 シリーズ03|次に学ぶビットコインの清算ヒートマップの見方実際の清算と推定価格帯を分け、OI・CVDと合わせて急騰・急落の中身を確認します。 保有コストも合わせて確認するシリーズ④|ビットコインの資金調達率の見方ロング・ショートの支払いと、価格・OI・CVDの変化を実データでつなげる。 基礎の次に読みたい応用編①CVDダイバージェンスと吸収の見方売られても下がらない・買われても上がらない場面を、3つの実例とその後の値動きで確認します。現物・先物CVDのよくある疑問
CVDが上がれば、ビットコインは上がりますか?
必ず上がるわけではありません。実例Bのように、積極的な買いが多くても価格が上がらない場面があります。CVDの方向と、価格の反応をセットで見ます。
現物CVDと先物CVDは、どちらを優先すればいいですか?
現物の買いが伴っているかを知りたいなら現物CVD。買い戻しやポジション変化まで調べたいなら、先物CVDとOIも重ねます。目的に合わせて両方を見る方が、上昇・下落の中身を整理しやすくなります。
CVDで資金流入額や、大口の購入量は分かりますか?
そのままでは分かりません。CVDは積極的な買いと売りの差で、取引所への入出金や買い手の属性を示すものではありません。資金移動を調べる場合は、オンチェーンなど別のデータが必要です。
実データの対象・計算方法・参考資料
取得日:2026年11月3日。対象:Binance BTCUSDT現物およびUSDT無期限先物。2026年10月25日0時〜11月3日0時(日本時間)の確定済み1時間足216本と、同期間のOIを取得し、本文の4区間を比較しました。
各時間の売り数量=総出来高−Taker Buy Base Asset Volume。差分=買い数量−売り数量。図の開始時刻を0として差分を累積し、CVDを作成しています。単位はBTC。先物OIは数量ベースのsumOpenInterestを使用し、ドル評価額の変動は混ぜていません。
価格変化率は各区間の現物始値と終値、OI変化率は同区間の始点と終点で計算。チャートは1時間足終値を各時間の終わりに配置し、始点のみ始値を使用しています。買い比率は、積極的な買い数量÷総出来高。表示値は丸めています。
これらは過去4区間の説明例であり、パターンの勝率を検証したものではありません。清算履歴・板履歴は今回の集計に含めていません。


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